リグレーフィールド外野フェンスの謎!ツタとレンガの危険性と特別ルール
メジャーリーグベースボール(MLB)屈指の歴史を誇るシカゴ・カブスの本拠地「リグレー・フィールド」。1914年の開場以来、100年以上の時を刻むこのクラシックスタジアムにおいて、世界中の野球ファンを惹きつけてやまない最大のシンボルが、美しく生い茂る「ツタで覆われた外野フェンス」です。
緑のカーテンが広がる景観はまるで絵画のような美しさを誇りますが、そのツタの裏側には「剥き出しの硬いレンガ壁」が隠されており、外野手が激突すれば大怪我につながる危険地帯でもあります。さらに、放たれた打球がツタの中にすっぽりと吸い込まれて消えてしまう前代未聞のアクシデントに対応するため、メジャー公認の特殊なグラウンドルールが存在します。なぜ最新鋭の近代スタジアムが立ち並ぶ現代MLBにおいて、危険とも思えるレンガとツタのフェンスが守られ続けているのか、その誕生秘話から特別ルールの真相、外野守備の過酷なリアルまで余すところなく解剖します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:リグレー・フィールドの外野フェンスは1937年にビル・ベック氏が植樹したボストンツタとイングリッシュツタで覆われた本物のレンガ壁。
- 要点2:打球がツタに埋まった際は「外野手が両手を上げる」ことでボールデッドとなり、安全にエンタイトル・ツーベースが宣告される。
- 要点3:アメリカ合衆国国定歴史建造物としての景観保護と選手の安全対策という相反する課題を抱えつつ、伝統の象徴として現在も維持されている。
【歴史と誕生の真相】なぜ外野フェンスはツタとレンガで覆われたのか
ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークに次ぎ、MLB全30球団の本拠地の中で2番目に長い歴史を持つリグレー・フィールド。この球場の外野フェンスがツタとレンガで構成されるようになった背景には、ひとりの稀代のプロモーターによる大胆なアイデアがありました。
外野フェンスにツタが植えられたのは1937年9月のことです。当時、カブスの球団職員(後にクリーブランド・インディアンスなどの名物オーナーとなる)を務めていたビル・ベック(Bill Veeck)氏が、無機質だったレンガ壁を美しく飾り、ファンに他では味わえない観戦体験を提供しようと発案しました。ベック氏はインディアナポリス・インディアンズの本拠地球場(ペリー・スタジアム)の美しい壁面に着想を得て、リグレー・フィールドのフェンス一面にツタを植樹したのです。
使用されている植物は、主に壁這い性が強い「ボストンツタ(Japanese Creeper/ボストンアイビー)」と、常緑性の「イングリッシュツタ」の2種類です。この巧みな組み合わせにより、季節ごとに劇的な表情の変化が生まれます。
シーズンが開幕する4月のシカゴは極寒であり、ツタはまだ芽吹いておらず茶色いツルと赤褐色のレンガ壁が剥き出しになっています。しかし5月から初夏にかけて急速に青々とした緑葉が壁一面を覆い尽くし、秋のポストシーズン争いが熱を帯びる9月下旬から10月には、燃えるような鮮やかな紅葉へと姿を変えます。球場の歴史そのものが呼吸しているかのような美しいランドスケープは、こうして誕生しました。

ボールが消える!?ツタに隠された「エンタイトルツーベース」の特別ルール
リグレー・フィールドの外野フェンスで最も有名な現象が、「フェアグラウンドに飛んだ打球がツタの中に吸い込まれて消える」という珍事です。打球が密集したツタの葉と枝の隙間に挟まり、グラウンド上から完全に消失してしまう事態が年に数回発生します。
通常の球場であればフェンスの隙間に挟まったボールは即座に審判団の判断を仰ぎますが、リグレー・フィールドにはMLB公式によって定められた明確な特別グラウンドルール(Ground Rules)が存在します。
そのルールとは、「ツタに入り込んだ打球を見失った外野手は、ボールを探しに行かず、即座に両手を高く上げて審判にアピールしなければならない」というものです。
外野手が「手を上げた(Hands up)」状態を審判員が目視で確認し、フェンス内のツタにボールが埋まっていると判定されれば、ボールデッドとなって打者走者にはエンタイトル・ツーベース(安全進塁権2塁)が与えられます。
ここで極めて重要なのが、「外野手がツタを手でかき分けてボールを探してはならない」という鉄則です。もし外野手がツタの中に手を入れてボールを探そうとしたり、自力で取り出そうと試みた瞬間、審判団は「ボールインプレーを継続した」と判断します。その場合、万が一ボールが見つからずに時間を浪費してもプレーは止まらず、打者走者がダイヤモンドを一周してランニングホームランになってしまうという手痛い代償を払うことになります。
過去には、ツタの中から探していた打球ではなく、「何ヶ月も前にツタに挟まっていた古い練習球がポロリと落ちてきて、グラウンドにボールが2つ存在する」という信じられないハプニングが起きた事例(レッズの左翼手JJ.ブレデイ外野手が絡む珍プレーなど)も報道各社によって大きく報じられました。まさに魔境と呼ぶにふさわしい独自のドラマが、このツタの中で日々繰り広げられています。
【実態検証】クッションフェンスがない理由と外野手が直面する激突の危険性
現代のプロ野球場において、外野フェンスに厚さ10〜15センチメートル以上の衝撃吸収ウレタンパッド(クッションフェンス)を設置することは、選手の生命と選手生命を守るための世界標準です。それにもかかわらず、なぜリグレー・フィールドには頑丈なクッションフェンスが存在しないのでしょうか。
その最大の理由は、リグレー・フィールドが「アメリカ合衆国国定歴史建造物(National Historic Landmark)」に指定されている点にあります。この指定を受ける建築物は、歴史的な外観や構造の根本的な変更が厳しく制限されており、球場全体が文化遺産として保護されています。カブス球団としても、100年以上受け継がれてきた「レンガとツタ」という唯一無二のアイデンティティを損なう全面的なパッド化には踏み切れないという歴史的背景があります。
しかし、グラウンドに立つプロフェッショナルたちにとって、このフェンスは常に恐怖と隣り合わせの場所です。ツタの葉に覆われているため視覚的には柔らかそうに見えますが、葉の数センチ奥は1930年代に積まれた本物の頑丈なレンガ壁です。時速160キロメートル近い大飛球を全速力で追いかける外野手がフェンスに激突すれば、コンクリートに突っ込むのと同等の衝撃を受けます。
カブスで右翼手を務める鈴木誠也選手をはじめ、歴代の外野陣はこのフェンス際で極めて繊細かつ高度な守備判断を強いられています。一般的な近代球場であれば「フェンスに体を預けながらキャッチする」というアグレッシブなプレーが可能ですが、リグレーでは激突時の肋骨骨折や肩の脱臼、頭部打撲といった致命的な怪我を避けるため、「壁との距離感を足の歩数とウォーニングゾーンの感触でミリ単位で測り、激突直前に急停止する」卓越したボディコントロールが必須となります。
MLB歴史的球場と徹底比較|外野フェンスの構造・安全対策データ
リグレー・フィールドの特殊性をより深く理解するために、MLBの一般的な最新ボールパークおよび同じく歴史的球場であるフェンウェイ・パークとの構造・安全面の違いを比較データで検証します。
| 比較項目 | リグレー・フィールド(カブス) | フェンウェイ・パーク(Rソックス) | 近代MLB標準スタジアム |
|---|---|---|---|
| フェンス主材質 | 赤レンガ+自然植生ツタ | 木製+硬質プラスチック(グリーンモンスター) | 高密度衝撃吸収ウレタンパッド |
| 衝突時のクッション性 | ほぼ皆無(極薄パッド部を除く) | 低い(硬質壁面が主体) | 極めて高い(怪我防止設計) |
| 打球消失時のルール | アピールにより即エンタイトル2塁打 | 隙間に入った場合のみボールデッド | 原則ボールインプレー(隙間なし) |
| フェンスの高さ | 約3.5m(11.5フィート)均一 | 左翼11.3m(約37フィート)〜右翼低層 | 約2.4m〜3.0m(球場ごとに規定) |
| 編集部の構造評価 | 伝統美は満点だが守備難度は最高峰 | 独特の跳ね返り処理技術が必須 | アスリートファーストの安全性 |
データが明確に示す通り、リグレー・フィールドのフェンス構造は現代のスタジアム建築基準から見れば極めて異例です。フェンスまでの距離は左翼約108m、中堅約122m、右翼約108mと標準的な広さですが、均一な高さ3.5mのレンガ壁が外野全体を取り囲んでいるため、フェンス直撃の長打に対する打球処理(クッションボールの跳ね返り)の予測が極めて難しい構造となっています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解を徹底解説
SNSやファンの間で囁かれるリグレー・フィールドのフェンスにまつわる噂について、取材・公式データに基づくファクトチェックを実施しました。
誤解1:ツタの下には隠しクッションが全面に敷き詰められている?
「いくらなんでも危険すぎるため、ツタの裏には見えないラバーパッドが貼られているはずだ」という言説がネット上で散見されますが、これは完全な誤解です。カブス球団は過去の大規模改修(1060プロジェクト)においても、レンガ壁の補強と保護を行いこそすれ、フェンス全面をパッドで覆う工事は行っていません。ツタを這わせるための格子状ワイヤーが張られている程度であり、外野手は文字通りレンガに立ち向かっています。
誤解2:ツタは人工芝のようなフェイクグリーン(造花)である?
「天候に左右されないようプラスチック製のツタを混ぜている」という噂も事実ではありません。球場のグラウンドキーパー(施設管理チーム)が毎日入念に散水し、剪定を行っている100%本物の生きた植物です。そのため、春先の寒波で育成が遅れたり、シカゴ特有の強風(ウィンディ・シティの由来)によってツタの葉が擦り切れ、時期によって壁の露出度が大きく変わるのもリアルな天然植物ならではの特徴です。
誤解3:ツタに入った打球は外野手が無理やり取って投げて良い?
前述の通り、ツタに埋まったボールを無理に引っ張り出して内野へ返球しようとすることは戦術的に絶対的な悪手です。審判が即座にツーベースを宣告してくれる権利を放棄することになり、打球を落としたりもたついている間に失点につながるリスクが極めて高くなります。

【プロの結論】伝統保全と選手保護の境界線|スポーツ施設論から見る未来
リグレー・フィールドの外野フェンスが提起している問題は、単なる野球のルールや景観の好みの話に留まりません。それは、「100年を超えるスポーツ文化遺産の保存」と「年俸数十億円規模の超一流アスリートに対する労働安全衛生」のせめぎ合いという、現代スポーツビジネスが直面する本質的な命題です。
近年のMLBでは打球速度が時速180キロメートルを超え、外野手のトップスピードも秒速9メートル以上に達します。衝突時のエネルギーは年々増大しており、伝統的なレンガ壁を維持し続けることへのリスク管理は一層シビアになっています。
現在カブス球団は、フェンスの根元部分や危険ゾーンの設計をミリ単位で微調整しつつ、ウォーニングゾーン(警告用のアンツーカー砂地)の幅と足裏への触感を最適化することで、外野手が目視なしでも壁の接近を察知できる最新の安全管理アプローチを採用しています。歴史の温もりをそのまま残しながら、現代最高峰のプレーを両立させるこの絶妙なバランスこそが、リグレー・フィールドが今なお「野球の聖地(Friendly Confines)」と称賛される真の理由です。
【リグレーフィールド 外野フェンス】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ボールがツタに入ったら、打者はホームランになることはありますか?
A1:ツタに入り込んだ打球がそのままスタンドに飛び込まない限り、ホームランにはなりません。外野手が手を上げてボールデッドが認められた場合は「エンタイトル・ツーベース(安全進塁権2個)」となり、打者走者は2塁、塁上の走者は2つ進塁となります。
Q2:フェンスのツタは冬の間はどうなっているのですか?
A2:シカゴの冬は氷点下20度近くまで冷え込むため、秋に紅葉したツタの葉はすべて落葉し、冬から初春にかけては枯れ木のような茶色いツルだけがレンガ壁に張り付いた状態になります。5月頃から再び新芽が芽吹き、夏に向けて美しい緑色に復活します。
Q3:鈴木誠也選手などカブスの外野手は衝突対策の特別な練習をしているのですか?
A3:特別な衝突練習というよりも、本拠地のウォーニングゾーンを踏んだ瞬間の歩数感覚と、フェンスまでの距離感を徹底的に体に叩き込む練習を行っています。クッションがないため「飛び込んで壁にぶつかりながら捕る」のではなく、「壁の手前で確実に捕球するか、クッションボールに素早く切り替える」冷静な空間把握能力が求められます。
まとめ:リグレーフィールドのフェンスが野球ファンを惹きつける理由
シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールドの外野フェンスは、単なる競技場の仕切りではありません。1937年に植えられたツタ、100年以上の歴史を刻む赤レンガ、そしてボールが消えた際に手を挙げるグラウンドルールに至るまで、そのすべてが野球というスポーツが育んできた生きた歴史そのものです。
最新鋭の開閉式ドームや全面LEDパネルの球場が増加する現代において、季節の移ろいとともに色を変え、時に予測不能なドラマを生み出すリグレーの外野フェンス。鈴木誠也選手をはじめとする名手たちが、その過酷かつ美しいグリーンモンスターの前で見せる洗練された守備の一挙手一投足に、ぜひ注目してみてください。 (出典: リグレーフィールド 外野フェンス(Yahoo!ニュース))